2010年11月30日火曜日

加藤巧 陶 Exhibition at Church Hall



加藤巧 陶

2010年12月4日(土)–8日(水)
会期中無休
午後1時–午後6時30分

於 瀬戸サレム教会 旧会堂
愛知県瀬戸市南山町1−164
phone 0561-82-6348

名鉄瀬戸線 栄町より急行で約26分

作品展に関するお問い合わせは
090-6591-8669 加藤
kokatogo@yahoo.co.jp
までお願いします


 瀬戸で生まれて瀬戸で育ちましたが、瀬戸でこのような展示をさせていただくのは初めてです。

 今年でちょうど60年の歴史を持つ教会の、古いつつましい教会堂での展示は、きっと良い雰囲気になるのではないかと楽しみにしています。
 いつもは作らないような十字架モチーフのタイルなども作ってみました。
 ステュアート・マードックの気分で5日間通いますので、今回は出欠のお知らせはいたしません。

 クリスマス前の季節に、普段はあまり立ち寄る機会のない町の教会を訪れてみるのはいかがでしょうか。ぜひご高覧ください。


 *スコットランド・グラスゴー出身のベル・アンド・セバスティアン‥Belle and Sebastianは、80年代のポスト・パンク期にあらわれた、後にネオ・アコースティックと呼ばれるようになる一連の音楽を、表面的な音のみでなく、もっとも正統的に受け継いでいると思えるグループのひとつで、フロントマンのステュアート・マードック‥Stuart Murdochは、有名になる前は教会の管理人をしていた。

2010年8月20日金曜日

加藤巧の陶 Pottery by Ko Kato - Exhibition



加藤巧の陶

2010年9月10日(金)–20日(月)
会期中無休
午前11時–午後7時

会場に出かける日、時間は
右下のTwitterにて毎日お知らせいたします。

於 月日荘
名古屋市瑞穂区松月町4-9-2
phone/fax 052-841-4418


高麗の瓶 A Crane In The Rain



 やきものの歴史上、しばしば最高峰といわれる中国・宋の青磁の影響を受けて産まれながら、本家である中国の人びとにさえ「翡色」として賞賛された高麗時代の青磁。
 朝鮮半島の青磁の、中国にはない独自の特徴が、薄い鉄分の混ざる生地を彫り、そこに白い土と、生地より濃い鉄を含む土を埋めこむことで白と黒からなる模様を表す、象嵌という技法だ。

 この高麗青磁の絵模様として代表的なものが、綿飴のような雲が浮かぶ中を鶴が舞うように飛ぶ雲鶴図なのだが、この小瓶‥徳利に見えるけれど、高さは10cmほどしかない‥のモチーフは、鶴と、雨。蒸し暑い雨模様がつづく季節、眺めれば少しだけしっとりとした気分にさせてくれる。
 口が欠けているが、金や銀で繕ってしまうと立派になりすぎて自分の部屋にそぐわない気がして、そのまま直さずにいる。 


Bottle, Celadon, Korea Koryŏ dynasty, 13th century

蓮華 The Lotus



 中国・清朝の、白磁のれんげ。呉須‥コバルトで絵付けのされたものはたまに見かけるけれど、無地のものはあまり無いように思う。
 安ものの雑器の印象だが、よく見ていると、手早くたくみに仕上げられた仕事は繊細だ。型に押したあと、まわりをきれいに切り取り、置いたときに下になる部分は、しっかりと高台のように底上げがされている。

 それにしても、このスプーンを「蓮の花」と名づけた人のセンスはどうだろう。テーブルの上に置いて眺めれば眺めるほど、水面にはらりと落ちた蓮弁に見えてくる。染付けのものも楽しいけれど、可憐な花びらのような姿は白磁ならではだ。


Soup Spoon ..Porcelain, China 18-19th century

2010年7月7日水曜日

そば猪口 Beautiful Shapes, Lovely Paintings



 そば猪口は骨董の入門編、ということがよく言われている。実際にたくさんのものが残されているし、絵柄も豊富なのでコレクションの対象としては最適であるから、確かにそうなのだろう。

 ところが、ポピュラーになるということはそれだけ求める人も多くなるわけだから、当然、良いもの・珍しいものはそれなりに高価になり、気軽な入門編などとは言い難い。叔父などに昔は安かった、と言われるけれど、残念ながら今は昔ではない。料治熊太さんの本にあるような掘り出しの可能性は全くない。いきおい手もとに集まってくるものは傷ものばかりになる。
 気に入りの猪口をみっつ並べてみた。どれもニュウ‥ひびや、欠けがある。いま傍らにあるのは、そのおかげだ。もちろんたまには自分で金繕いをしなければならない。それでも、こうして眺めていればなんだか幸せなのだから、欠けていてくれるのも悪いことではない。

 ところで、そば猪口そばちょくというけれど、いったいこれはいつ頃からの呼び名なのだろう。現存する数から考えても、これらがすべて蕎麦つゆ用だったとは思えないし、古いタイプのものはそば猪口というには小さすぎるし、おそらくぐいのみから向付け、湯のみなど、日常のいろいろな用途に使われたのだろう。

 カイ・フランク‥Kaj Franckも影響を受けたと思われる、スタッキング‥重ね置きできるシンプルかつ美しい器形といい、何種類あるのか見当もつかないくらい多彩な絵付けの洗練された魅力といい、人の歴史上でももっとも豊かな日用食器であることは間違いない。


Soba-Tyoku ..Porcelain, Imari Ware, Japan 17-18th century

繭皿 Wooden Plate



 かつて上州の養蚕農家で使われたという、繭皿。一見まるで漆でも塗られているようだが、これは長い間に囲炉裏のススによっていぶされ続け、自然にコーティングされたもの。そのままにしておくと手が真っ黒になる。布と紙でしっかり乾拭きしてやると、だんだんと落ちついた。

 糸を出しはじめた蚕を、繭を作る場所へ移す際に、この木皿にのせて運んだそうなのだが、エッジのくっきりとしたその形状と炭の黒があいまって、産地も時代も判然としない不思議な雰囲気を醸し出している。



Wooden Plate - Used in a Silkworm Farm, Japan 20th century

2010年7月6日火曜日

鉄の風あい Surface of The Iron Object



 古い、時代を経た鉄の道具の‥道具でなくてもよいが‥肌を眺めたり、撫でたりするのが好きだ。
 新品の鉄は痛そうだったり冷たそうだったりするけれど、時を経て、錆びたり朽ちかけていたりする鉄というのは、なぜこうあたたかだったり、気持ちを鎮めてくれたりするのだろうか。

 一見適当なようでいて繊細な仕事ぶりと、そのまま飾っておいたらきれいなのでは、と思わせる形にひかれて求めたこれは、ずっと何に使ったものだかまるでわからずにいたのだが、あるとき炭を扱うお店で似たものを目にして、炭焼きの道具であることを知った。ただ、どんな工程でどのようにして使ったのかは、まだ知らない。
 

Charcoal Maker's Tool, Iron, Japan 19th century

オランダのやきもの 2 Old Dutch Pottery 2



 オランダをはじめヨーロッパのやきもののルーツはそもそもイスラム圏にあって、イスラム勢力のイベリア半島進出とともに、その技術も西欧へもたらされた。モスクを飾るタイルなどは、その代表といえるかもしれない。
 はじめイスパノ・モレスクといわれたイベリア産の陶器が、スペインのマヨルカ‥マジョルカ島を経由して各地へ輸出されたため、マヨルカ‥マジョルカと呼ばれるようになったのは、日本の有田で作られたものが唐津とか伊万里と通称されたことと似ている。
 マヨルカ‥マジョルカ陶は16世紀のイタリアで広く普及して、イタリア各地に窯が開かれている。オランダやベルギーなどへ渡ったのは、こうしたイタリアの職人たちだったらしい。

 この白いデルフトのお皿は17世紀初頭のもので、イタリアから伝わった当初の、オランダではマヨリカといわれる様式が強く残る。
 17世紀後半のものが器体全面を白い錫釉で覆っているのにくらべて、このお皿は表だけに錫を混ぜた釉を使い、裏面には錫を入れない鉛釉を施していて、高価な錫を節約しているのが窺える。
 器形としても、見込みに重ね焼きの際の目あとが残されていること、裏面が平らではなく高台が作られている点など、後年の作とのちがいが見てとれる。
 銀器から現代のボーンチャイナまで、ヨーロッパのテーブル・ウェアの基本ともいえるかたちは豊かで、たっぷりと掛けられた錫白釉の表情も眺めてあきることが無い。

 

Plate, Majolica - Delft Ware, The Netherlands 17th century

参考文献: The Edwin Van Drecht Collection - オランダ陶器 朝日新聞社 1995年

オランダのやきもの Old Dutch Pottery



 有名なデルフトの藍絵や白のやきものとは趣の異なる、17世紀初頭のオランダの、茶色や緑の陶器。フェルメールと同時代の風俗画の片隅にも描かれているこれらのやきものは、そのみかけから想像がつくように、やはり庶民の生活の中で使われたものらしい。

 デルフト陶の白色は、鉛をベースにした釉薬に錫を混ぜることで作られているけれど、より安価なこういったものの場合は、装飾的に美しい効果を得られる錫の分のコストを減らして、鉛だけを使った透明な釉を、鉄分の多い生地にそのまま掛けて焼かれている‥筒型のほうは、内側にしか釉を掛けていない。緑のものは鉛釉に銅を混ぜたもので、これは床タイルなどにも見ることができる。

 それにしても、柳宗悦と民藝の先達以来、さんざん語られていることではあるけれど、これらのやきものの出自とはうらはらの、この立派さはどうだろう。取手付きのものは、リーチがお手本にした英国中世陶と同様の強さと存在感を持っているし、クリーム‥軟膏などを容れたらしいカップの、単純にろくろで引きあげられたずん胴のボディーから端反りになった口もとへ連なるフォルムは、簡素の極地ながらこのうえなく美しい。
 

Bowl with Handle, Cream Bottle, The Netherlands 17th century

2010年4月27日火曜日

加藤巧 Still - Exhibition



STILL

加藤巧 陶展

2010年5月13日(木)–22日(土)
会期中無休
午前10時–午後5時
最終日のみ午前10時–午後4時

於 ギャルリ・ディマージュ
愛知県刈谷市広小路3-605
phone 0566-24-2291

JR東海道線にて名古屋駅から快速で約15分
刈谷駅にて名鉄三河線碧南行きに
お乗り換えいただき、
刈谷市駅下車、徒歩1分です


Discs for this month:







Absolute Classic Masterpieces :






李朝のお皿 White Plate



 李朝‥朝鮮王朝初期の、白いお皿。よく見られるこの時期のお皿は、茶わんをそのまま平たくしたように、ゆるやかに曲線を描いて立ちあがり、わずかに端反りになったかたちが普通だ。このお皿は縁に段をつける、いわゆる折縁になっていて、それだけでどこか洗練された雰囲気を醸している。
 作行きからいって民窯の産だと思うのだけれど、端正なつくりの官窯のお皿に見られるこの縁作りで、民窯のものは、ありそうでいて実際にはあまり見たことがない。
 一見して連想するのは初期伊万里のお皿で、朝鮮半島出身の陶工たちが作ったとされるそれらのお皿は、当然のようにこのお皿にとてもよく似ている。以前に見せていただいた初期伊万里のまっ白なお皿は、箱から出た瞬間、李朝かな、と思えるようなものだった。

 伸びやかな造形。ろくろから下ろした時の感覚がそのまま残ったような歪みも美しい。


White Porcelain Plate,  Korea  Joseon dynasty  16-17th century 

2010年4月26日月曜日

丸い壺 Vase and Space



 壺‥ことに丸い壺は、自らが包みこむその内側だけでなく、外側の空間までも支配する。
まるで周りの空間を自身の丸い姿の余白みたいにみせてしまうようで、だから壺は魅力的なんじゃないだろうか、と思う。
 この新羅‥つい新羅というけれど、統一新羅末期か、高麗初期かもしれない‥の壺は、気持ちよくふくらんだ胴のかたちや繊細でシャープな口作りに加えて、胴体下部にみられる格子状の叩き成形の跡が愛らしい。


Vase,  Korea  late unified Silla period

2010年3月18日木曜日

加藤巧 茶わん Teabowls made by Ko Kato



加藤巧 茶わん

2010年3月23日(火)–4月3日(土) 3月28日(日)は定休日です
午前11時–午後6時半

於 ギャラリー和
〒460-0008
名古屋市中区栄 2-1-12
ダイアパレス伏見1階 108
地下鉄伏見駅4番出口を東‥栄方面へ一筋目右折

2010年1月30日土曜日

李朝の白磁 White Porcelain for Ordinary Life



 李朝の白磁‥といえば、まっさきに思い浮かぶのはやはり満月壺‥タルハンアリ、とよばれるまん丸い大壺だろうか。あるいは面取りや鎬‥しのぎが施された壺や瓶の類かもしれない。
 いずれにしても、美術館に並んだり、ものの本でとりあげられたりするのはそうした名品であるわけだけれど、まだ白い磁器が貴重なものだった朝鮮王朝初期の頃ならともかく、一般にも広く普及していた19世紀あたりには、生活にかかわる様々なものが白磁で作られていた。

 写真の左奥の取手のついたものは灯火器‥ランプで、この頃の朝鮮半島ではごく一般的なかたちだ。拙蔵の品はそれでもなんとなく李朝白磁らしいしっとり感があるけれど、少し時代の下がるものになると、銅版転写でハングルがプリントされていたりもする。
 その手前の丸っこい器は日本の骨董屋さんではふつうは盃として紹介されている。こちらもやはり灯りをともす時に使われたもので、木製の灯火器にのせる油皿らしい。口もとが内側にすぼまっているので盃として使うにはどうだろう、と思っていたけれど、使ってみると意外になじみがよくて気に入っている。荒い砂がたくさん付着した厚い底も、眺めているとなんとなく愛らしい。
 そのとなりの小さいお皿は最初は何かの蓋かな、と思ったり、明器‥副葬品かな、と思ったり、やはり食卓で使った調味料入れの小皿だろうか、と考えたりしている。小さくて浅いので、あまりたくさん呑まない僕の盃としてはぴったりだ。
 右奥のお皿だけは他よりも古く、おそらく朝鮮王朝の初期から中期にかかる頃の作ではないかと思う。よく見ることのできる初期の白磁質の器とは器形や釉調が異なり、どことなく17世紀の初期伊万里の白磁と共通する雰囲気を持っているような気がするので、同時代のものかもしれない。地味で簡素な姿だけれど、これもまたとても可愛い。

 名品でなくとも、お小遣い程度で入手できるこれらの品々も、同じくらいの時代の同じような窯で作られていて、その肌あいや味わいは大きなものとかわらない。浅川巧の「朝鮮陶磁名考」には、こうした雑器としての白磁の様々な器形と用途が紹介されている。眺めながら、当時の生活を想うのも楽しい。


Clockwise from top Right, Plate 16-17th century, Small Plate, Oil Cup, Oil Ramp 19th century, Korea  Joseon dynasty