2009年10月9日金曜日

Colors of soul



 ソウル北部、景福宮ちかくの北村(プッチョン)には、瓦葺きの韓屋が多く残る。三清洞(サムチョンドン)から北村にかけての界隈には近年、ギャラリーやカフェ、レストランが増えているとのこと。モダンな内装の焼肉屋さんでのランチはおいしくてお値段も手頃。甍のむこうに景福宮と、かの国特有の岩山を望む。

View from Bukchon area, Seoul, Korea  



 ハングルは韓民族独自の文字として、朝鮮王朝四代国王である名君・世宗(セジョン)により15世紀に創りだされた。これは王朝中—後期の肉筆。美しい。国立中央博物館の特別展示より。あとで図録を買おうと思ったら、売っていなかった‥ので、詳細がわからない。

Calligraphy by the Hangeul alphabet,  Korea  Joseon dynasty,  National museum of Korea



 前回の訪問でひとめぼれをした高麗時代の鉄仏のドレープ。鋳型のつぎめに出来るラインがそのまま残る。そのラフさと鉄の素材感がたまらなく魅力的。

Buddha, Iron,  Korea  Goryeo dynasty  10th century, National museum of Korea



 朝の南大門(ナムデムン)市場。唐辛子の色彩がねぼけた眼に刺激的。秋夕‥チュソクのすぐ前だったので、お餅の類もきれいで楽しかった。

in Namdeamun market, Seoul, Korea



in Namdeamun market, Seoul, Korea


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2009年10月8日木曜日

宗廟 Jongmyo



 ソウルへでかけた。前回ははじめてということもあって、やきものをはじめ、いろいろな工芸品を安く手に入れられるのではないか、という甘い期待を抱いていた。つまり骨董屋さん巡りに夢中で、観光客らしい名所旧跡にはまるで訪れなかった。だから、今回の旅行でははじめから、ここだけは行きたいと思う場所があった。

 宗廟(チョンミョ)は朝鮮王朝歴代の王や王妃の魂が祀られている場所で、離宮‥長く王宮として使われた‥である昌徳宮(チャンドックン)に隣接し、正式な王宮の景福宮(キョンボックン)にもごく近い。周りは市民が憩う公園になっていて、街の中心部ということもあり、なんとなく京都の下鴨神社を思いおこさせる。木陰でおじさんたちが碁を打つ音が耳に心地よい。

 公園を抜け、参道を歩く。まっすぐ石畳が伸びている。まんなかに立って写真を撮ってから気がついたのだけれど、この石畳は先祖の魂が通る道であり、人が立ってよい場所ではないという。知らないこととはいえ、とても申し訳ない気持ちになる。
 廟の域内には、黒い体にワンポイントの青が美しい馴染みのない鳥が姿を見せる。実際に見るのははじめてだけれど、民画などにはよく登場する鵲(かささぎ)だ。民画では虎と対で描かれ、神様の言葉を伝える使いであるとされる。その鵲たちに導かれるように長い塀にそって進むと、その塀の中が廟の正殿だった。

 100メートルほどもあるという横長の正殿の前に広がる、花崗岩を敷きつめた月台と呼ばれる広場が、宗廟を特別な魅力のある場所にしている。今でも毎年祭礼が行われるという、舞台のように地面から一段高くなっている月台は、中心から端へ向かって、ゆるやかに曲面になっている。隣に建てられた永寧殿の月台はわりと水平を保っているので、わざと曲面にしているとは思えない。この曲面と、これも中心から端に行くにしたがって碁盤目から徐々に目が粗くなり、ばらばらとばらけていく石畳の不規則さが、冷たくいかめしいものになりがちな石の広場に不思議なリズムと表情を与えている。
 
 晴天に鵲の鳴き声と観光ガイドの声が溶けていく。宗廟はユネスコの世界遺産に登録されてもいるので、入れ替わり立ち替わりにツアーの人びとがやってきては去っていく。正殿の正面で韓服を着た老人が伏せて祈っていた。巡礼のようなものだろうか、と思って眺めていたら、しばらくすると老人はこちらへやってきて、何ごとか話しかけてくる。僕は日本人です、と言うと、とてもやわらかな顔で手をあわせる。とてもきれいな笑顔だった。


Jongmyo, Royal ancestral shrine of Joseon dynasty.  Seoul, Korea