デルフトの古いタイルの絵付けはほんとうに素晴らしい。こどもたちのいろいろな遊び‥ボール遊び、凧あげ、釣り‥や人びとの生活の場面から、聖書の物語、神話の世界、花や卓上の静物‥柳宗悦はレムブラントを想起する、と書いているけれど、まさにそのレンブラントやフェルメールが生きた時代の、オランダの風俗や信仰などの様子がいきいきと簡潔な筆致で描かれている。
さまざまな絵柄があるなかでも、ことに魅力的なのは天使が描かれているものだろう。天使といっても愛らしいばかりではなく、何かいたずらをたくらんでいそうだったり、いじわるそうに見えたり、その表情ひとつひとつの豊かさ‥顔の見えないものも多いけれど、そこにも表情はある‥には感心するほかない。
タイルのまんなかに描かれた絵のまわりの余白。この余白もまた、デルフトのタイルに魅かれる要素のひとつだ。広い余白の中心にぽつりと置かれた動物など、時には寂しげに思えるのだけれど、描かずに描いているこの余白が、ちいさなタイルの画面と物語に、広さと奥行きをもたらしている。
世界中のやきものの歴史のなかでも、デルフトのタイルの藍絵は伊万里磁器の猪口と並んで、もっとも洗練された絵付けでありデザインであると思う。
Delft Tin Grazed Tile, The Netherlands 17th century
Absolute Classic Masterpieces :
R.I.P. Rowland S. Howard