2009年11月12日木曜日

絵唐津 Pictures on Karatsu



 灰色や茶色の地味な器体に、ごく簡素な模様がさらりと描かれている。植物をモチーフにしたものが多いけれど、咲きほこる花よりもむしろ風に揺れる穂や、何気ない草葉のほうが多く見られる。
 
 桃山から江戸のはじめのほんの短い期間に焼かれた、いわゆる絵唐津の絵付けは、同時代の美濃の志野や織部と共通する意匠もありながら、より身近で親しみ深い印象を持つ。唐津の諸窯が朝鮮半島出身の人びとによって開窯されたことの証明のように、唐草や渦巻きがよく知られる道園窯のものは、鶏龍山窯との近親性を感じさせる。
 
 古くより茶陶として愛されてきただけに完器を手にするのは簡単ではないけれど、かけらであれば、出光美術館などの名品に負けず劣らずの筆使いを折々に楽しむこともできる。それもひとつではなく、さまざまな絵柄、さまざまな焼きあがりを眺めていられるのは、このうえない贅沢だと思っている。


Pieces of Karatsu-ware,  
Japan  Momoyama-Early Edo period  16-17th century